「イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く」
イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く (サッカー批評叢書)
- 作者: 西部謙司
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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選手に創造性がないと言うが、それは監督に創造性がないからではないか
オシム監督は、同じ練習をしないことで知られている。似たような練習はあるが、全く同じ練習を毎回繰り返したりしない。選手の数、天候、グラウンドの状況など、そのときどきの判断で練習メニューを組んでいく。事前にどんなトレーニングをするかはコーチングスタッフでさえ知らされていない。というよりも、オシム自身がその場の判断で、即興的にメニューを決めていくケースがあるので事前には確定しないのだ。
オシムのサッカーは走るサッカーとも言われている。しかし、ジェフの3年間を追っていくと、走るサッカーをやりきるには「いかに走らないか」が重要な要素となっていたことがわかる。
攻撃面での大きな特徴は「数的優位を作る」だ。数的優位を作るにはボールホルダーをサポートするランニングが不可欠だが、その前にビルドアップを確実に行ってランニングを有効にするお膳立てが必要になる。さらに、ビルドアップを確実に行うには、数的優位を作る必要もある。最終ライン付近でのビルドアップで、GKをパス回しの一員として機能させるのは、最初のビルドアップの段階で数的優位を作るためだ。GKがパス回しに加わることで、ほとんどのケースで数的優位を確保することが出来る。ここから数的優位→確実なビルドアップ→スペースの確保→ランニングによる数的優位→確実なビルドアップという循環を作っていく。