サッカースカウティングレポート 超一流の分析


サッカースカウティングレポート 超一流の分析

サッカースカウティングレポート 超一流の分析


        • -

(以下本文)

  • どのあたりにパスを何本通したかといった数値は、ある程度試合を蓄積しないとデータとして有効ではありません。
  • パスが何本成功したかとか、誰から誰に何本パスを通っているかというデータよりも、試合を決めるような決定的なパスを見極めて、誰がどのような性質のパスを出しているかを重要視します。
  • 例えば、攻撃しているチームのボールがあるところだけでなく、俯瞰してディフェンスラインを観るのです。最初はなかなか違いに気が付かないと思いますが、「前線のこのあたりにボールがあるときは通常はディフェンスラインがこういう形になっている」というのを感覚的に掴み取っていれば、「あれ?」と感じる瞬間が出てきます。
  • 一生懸命その選手を抑えるよりもむしろ、いいパスが入らないようにチーム全体が意識していく方が効果的なのです。
  • チームの分析
    • 両チームの並びを書く
    • 選手の動きを確認する。矢印で選手の動きを付け加える。
    • マッチアップなどを確認する。ミスマッチがどこで起きやすいのかを見極めていく。
  • スカウティング術のノウハウ
    • システム
      • 試合中「ここにボールがある場合」を何パターンか想定して、両チームの選手たちが取るだろうポジションをイメージするのです。フォーメーションとマッチアップを確認すると、どの場合に数的優位を取ろうとしてその代償をどこで払っているか、すなわちどこが数的不利になっているのかが見えてきます。
      • 一人余らせる、つまりプラス1にするためには、どこかをマイナス1にしなければなりません。ここはふりーにしても構わないという選手なり、ポジションなり、あるいはエリアなりを決めるのです。当然、弱みの部分を相手に気づかれるとまずい。だから、いかに相手をだますか。私たちはその工夫のことを「砂をまぶす」と言います。
    • プレースタイル
      • 大きく分けると、自分たちでボールをつないで責めるポゼッションプレーと、できるだけ早くFWにボールを当てて攻めるダイレクトプレーが挙げられます。
      • 同じダイレクト系であっても、アクション系、リアクション系、個人技主体的、組織的などがあり、傾向はあっても特色が独立していることは少ないのです。すべてがグラデーション。白か黒かではなくて、より白に近いか、より黒に近いかという分析になります。
      • 得点パターン・失点パターンに眼を向けると、そこから攻守のキーマンやホットライン、攻略できそうな弱点など、いろいろなことが見えてきます。そのチームの長所・短所が如実に表れることの多い得点パターン・失点パターンは、細かいスカウティングのための入り口となりえます。
    • 攻撃・守備の中心選手
    • 攻撃パターン
      • 攻撃パターンに関して分析する際に、まず確認するのがビルドアップです。最終ラインから中盤にかけた構成と、そこでのビルドアップの方法を観れば、そのチームが、どこで、どのような数的優位を作ろうとしているのかが見えてきます。
      • 最終ラインの構成を考えていきますと、3バックか4バックが基本になります。
        • 3バックは、最終ラインが3枚なので中盤で数的優位な状況を作りやすく、トップ下も置きやすい。ただ、3バックの外側はどうしてもボールを流し込まれやすくなります。
        • 一方、4バックには4バックの利点がありますが、ビルドアップするときに相手が2バックとすると、フィールドの横68メートルを4人でパス回しすることになるので、中盤で数的優位を作るのが難しくなります。そんなとき4バックのチームはどうするのか。両サイドバックを思い切り上げて張らせて、後ろを3枚に減らしながらそのサイドの中盤1人をトップ下に持っていく、などがよくあるパターンです。つまり、ビルドアップのときは3バック的なボールの動かし方をしようというものです。
    • 守備パターン
      • フォアチェックかリトリートか
        • 通常2トップで戦っている場合、相手が3バックの場合は2人で3人を、4バックの場合は2人で4人、あるいは中盤1人を加えて3人で4人を見るようにディフェンスします。前線における相手との関係で、マイナス1とかマイナス2という状況を作れば、その分最終ラインで数的優位に立てるからです。言い換えれば、中盤以降の選手たちに数的優位な状況、ボールを奪える状況を作るために、前線でハードワークするのです。
        • 前線でのディフェンスのもう一つの役割は、ある程度コースを限定することです。ボールホルダーに対するアプローチの角度を決めることで、パスを出せる方向を限定し、後ろの選手にPredictibleな状況を作ることで、さらにボールを奪いやすくするのです。
      • シールオフとネットディフェンス
        • シールオフとは、中から外に追い込み、縦パスを出させて奪う、狭いエリアに蓋をするイメージの守り方
        • 縦パスを出させないように網を張って、中に追い込み、横パスを狙う守り方。
      • 3バックのジレンマはサイドにあります。中盤の両サイドが高い位置でプレッシングをかけると、その背後、つまり3バックの両サイドに空いたスペースにボールを流し込まれてしまう。ただし、攻撃面では両サイドの選手をウイング的に走らせることができるので、サイドからの崩しによってチャンスを作ることができます。
      • 4バックはフィールドの横68メートルを4人で守るので、バランスを取りやすくなります。特に、対戦相手が1トップとか3トップの場合はぴたりとはまる。
    • 選手の個人能力
      • NA
    • セットプレー
      • NA
  • 私を含めて、ワールドカップを経験するまでは多くの人が「基本の部分」では勝負できるけど、世界との戦いでは「基本ではない部分」が勝敗を分けると思っていました。しかし現実は違っていました。基本というのは低いレベルではボロが出ないで済む。だけど、レベルが高くなればなるほど、基本の質の違いが否応なく現れてしまうのです。例えば、トップスピードのときや激しいプレッシングに逢うと、途端に正確なパスが出せなくなったり、正しい判断が出来なくなったりする。結局、どんなに素晴らしい個性を持っていても、レベルが高くなるとそれを発揮させてもらえなくなってしまうのです。もし日本の中に「基本」と「個性」が対極にあるものという認識があるとしたら、それは改めなくてはならないでしょう。一つ一つのプレーの精度の差が積み重なると、とてつもなく大きな差になってしまうのです。