高木徹「「バレンタイン流マネジメント」の逆襲」

「バレンタイン流マネジメント」の逆襲

「バレンタイン流マネジメント」の逆襲


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(以下、引用)



バレンタイン監督は、選手とのコミュニケーションを非常に多くとる監督である。



とにかく褒める。



選手にとって不都合な采配をするときは、きちんと理由を伝える。



ボビーは失敗してもほとんど怒ることがないが選手としてそれに甘えていたら、その時点で一軍にはいられないと思います。



成功した失敗したでは、何の感情も表しませんね。たとえば、投げて打たれた場合でも、抑えることもあるんだから、打たれることもある、という割り切り方をしているはずなんです。ただ、打たれて当然、という状況になっていたとき、あるいは、平凡なゴロをとる準備がしっかりできていなかったときには、選手を叱りつけることが過去何回かありました。(中略)一生懸命にやったプレーに関してはとがめることはありませんが、あまりに不甲斐ない、プロとして恥ずかしいプレーをした場合だけ、かなり絶叫しながら、暴れるまではいかないですけれど、それぐらいの態度は見せますね。(小宮山悟氏)



まず好奇心が旺盛である。次に、部下との直接のやりとりを大事にする。そして、知識に対する渇望がある。選手、指導者として約40年のキャリアがあるが、野球について分からないことがあれば躊躇無く質問する。



自分は”□□をしてはいけない”という否定的な言い方は好まない。常に、”□□をしよう”という積極的な指示しかしないようにしている。



バレンタイン監督はスポーツ選手が「ENJOY」することについて、こう言っている。「良い結果がでたとしても、そのことがスポーツ選手にとって満足につながるわけではありません。バッターボックスに入って、自分の能力すべてを使って対処すること。それこそが、”目の前の状況を楽しむ”ということです。その瞬間こそ、すべての活力と、すべての努力と、そしてすべての喜び(JOY)が一緒になって現れる、人生のなかでももっとも素晴らしい瞬間になるのです」



「選手たちが素晴らしい活躍をしているとき、調子がよく、鋭いスイングをし、良いボールを投げているとき、私は彼らには近づきません。その必要はないのです。私が彼らの活躍に気づいていて、それに感謝していることはわかるようにしますがね。私が彼らに近づくのは、彼らが問題を抱えているときです。混乱していたり、自分の不甲斐なさに怒っているときです。そういうとき私は彼らに接するようにします。それは彼らに孤独ではないんだ、私が彼らの味方についているんだということを知らせるためです。何も心配することは無いんだ、と」



大切なのは結果ではありません。そのプロセスこそが大切なのです。



さらに、いわゆる「補欠」に近い存在の選手たちにもバレンタイン監督の視線は注意深く注がれる。「彼らこそ報いられなければならない選手たちなのです。どんな小さな功績でも見逃さないようにと私はコーチたちに指示しています。そして、私自身も、どんな細かいことでも見逃さずに、それをすべて選手に伝えられるようにと心がけています。それがほんの短い言葉であってもいいのです」



私は勝っている試合でこそ、出来るだけ多くの交代選手を起用するようにしています。それは、彼らに”勝利に貢献した”という実感を持ってもらうためです。他のチームは、負けている試合で選手を交代させることが多いのですが、それでは彼らは”敗北体験”を共有してしまうだけで、意味が無いのです。



選手の働きに違いを生む原因は一つだけではありません。そこにマジックなどないのです。