不動心

不動心 (新潮新書)

不動心 (新潮新書)



松井秀喜さんを松井秀喜にしているのは、強靭な肉体や、野球センスではなく、本当の意味では、彼の「失敗に対する心構え」にあると感じた。



多くの人は成功し続ける人が好きである。しかし、成功し続ける人は必ず大きな失敗をする。なぜなら、失敗しない人間などいないからである。



大切なのは、彼が言うように、成功し続けることではなく、失敗をいかに乗り越えるかということにある。



多くの人間は失敗を嫌う。しかし松井秀喜さんは「失敗に感謝する」。さらに、彼が言う失敗や困難を乗り越える力とは、失敗を受け容れて、それを更なる成長への踏み台にしようとする「努力」を言う。



「努力できることは才能である」。松井秀喜さんは努力の天才である。


    • -

(以下、内容)



しかし、難しいことを言うようですが、その苦しみやつらさこそが、生きている証ではないでしょうか。僕は生きる力とは、成功を続ける力ではなく、失敗や困難を乗り越える力だと考えます。



どんなに医学が発達したとしても、骨折する前とまったく同じ状態に戻ることはあり得ません。きっとバッティングにも影響があるのでしょう。でも、それを悲しいとは思いません。それを含めて、この左手首と付き合っていくつもりです。以前と同じように動かないのならば、工夫して、練習して、トレーニングをして、骨折する前よりすごいバッターになってやればいい。心の底から、そう思っています。いつか現役を引退するとき、左手首を見つめて「おい、あのとき骨折してよかったよなあ」と語りかけてやりたい。そういえる日がくるかどうかは、これからの自分自身にかかっているわけです。間違っても、「あの時、骨折さえしなければ…」と振り返るような野球人生だけは送りたくありません。



骨折する前の状態に「戻そう」とするリハビリや練習では、息苦しく感じてしまうかもしれません。しかし、「さらに進化しよう」と思えば、つらい道のりも少しは楽しく感じられます。


    • -

追伸



僕もいい歳だ。子育ての事を思った。



多くの大人が子供に教えるのは、「いかに成功するか」「いかに他人との競争に勝ち抜くか」ということばっかりだ。



そんな折、「成功し続けることではなく、失敗や困難をいかに乗り越えるかということにある。」という言葉を読んで感動した。



僕は、子供を育てるときにも、成功する力ではなく、失敗や困難をいかに乗り越えるかという力を育んであげれば、もっともっと日本は良い国になるように思いました。