「フリーター漂流」


東京駅OAZO丸善は朝9時から開いているから、良い。広い。


朝11時まで立ち読みして、論理系統の本、時間の使い方の棚を制覇する。


そして、現在売れている「気の重い本3トップ」に取り掛かる。まず第一冊目。


NHKの「クローズアップ現代」で反響が多かった回を書籍化した本らしい。


フリーター漂流

フリーター漂流


「フリーター漂流」では、?20代前半、?20代後半、?30代の3つに分けて、フリーターに密着取材を行っていた。


?20代前半→親もまだ働いている世代。


「好きな時間働けて、好きな時間友達と遊べる」「妥協して働きたくない」という想いでフリーターが楽しい、という感じ。


?20代後半→親がリタイアする世代。


同世代の人間と収入が変わらなかった20代前半を終えて、収入に差が生じ始める。「そろそろ正社員になりたい」という想いが強くなってくる。とは言えど、すでに就職先はかなり限られてくる。理想と現実に悩んで、やっぱり正社員になれずにもがく。派遣社員では、彼女の両親も結婚を認めてくれない。


?30代→親が死ぬ世代。


親が死ぬ、もしくは医療費等でお金がかかり始める等により、親に養ってもらえなくなってしまう世代。「正社員になりたいが、どこの企業も雇ってくれない」という状況。この段階で気づいても、もう後戻りはできない。

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この「フリーター漂流」には、僕の目指していた某会計系試験に合格しなくて派遣社員で働いている28歳というストーリーも出てくる。あと、親が借金まみれになって、その内に自分も厳しい状況に追い込まれてる例とか。


何が怖いって、一度フリーターとか派遣社員になったら、正社員という受け皿に戻ることは非常に難しいってことだ。女性はまだしも、20代、30代の男性がこの状況になると、もうかなりどうしようもない状況が描かれている。派遣社員も、政府の集計上はフリーターと同じ分類らしい、ということも書いていた。


背筋がぞくっとした。というか、受験期間中にこれ読んでいたら、間違いなく圧し折れていたと思う。というか今だって他人事じゃない。色んなこと思いつめて入院したりしたら、そんな僕を雇ってくれる受け皿は、その時の僕の目の前にはないかもしれない。


横を見たら、経済同友会代表幹事であり、日本IBM代表取締役会長である北城恪太郎さんが「経営者、15歳に仕事を教える」という本で「フリーターが増え続けるのは 働くことを教えていないから」と主張していた。


その横では井深大さん、盛田昭夫さんを引き継いで、SONYの舵取りをした大賀典雄さんが「大賀典雄、15歳に「夢」を語る」という本を出していた。「私の子供時代は、第二次世界大戦で・・・」というような下りの本だ。


もちろん北城さんも大賀さんも立派過ぎる人であると思うが、完全にもうご老人である。ちょっとフリーター等に対しての認識が甘いのではないかと感じた。「働くことの本当の意味を知らないから」とか「最近の若者は苦労をしらないから」というような論法では、立ち行かないところまで状況は厳しくなっているような気がする。


というか、フリーターとか派遣社員を子会社・孫会社で使って、利益を上げている会社側の人間が、そういうこと言うのは偽善なんじゃないか。


現在の日本の株式市場の盛り上がりは、企業が派遣社員等を使いまくって人件費を大幅に削っていることに起因してるんじゃないか、と思わなくもない。表面はハッピーな感じでも、一枚皮をめくるとおぞましい未来が僕たちの面前に現れるような気もします。