羽生善治


簡単に、単純に考える (PHP文庫)

簡単に、単純に考える (PHP文庫)


最近は積極的に、本を出版している羽生善治名人。近頃は異業種の方との交流によって、自分の将棋の世界を深めていきたいとおっしゃっているようです。


それにしてもこの本の題名にもあるように、「簡単に、単純に考えること」はとても難しい。状況が厳しくなればなるほど、平常ではいられなくなる。


この中で、二宮清純さんとの対話が面白い。


?「有名受験校の合格率が高いのは、先生の教え方が優れていることもあるでしょうが、友達同士が刺激しあって自然にレベルが高まるということの方が大きい。」


?「柔道で活躍した、古賀稔彦という人がいます。私は、日本の柔道史上で最高の天才だと思っているんです。彼も羽生さんと同じことを言っています。一般に柔道というものはお互いに組み合ってからが始まりだと思われていますよね。しかし、彼は、組む前が勝負だと言うんです。」


?「現代の将棋の特徴の一つは、相手に手を渡すということなのです。自分で手番を握って常に主導権をもってやっていくというのではなく、相手に取りあえず手番を渡して、その力を利用して反撃するという考え方です。戦略を組み立てる段階では主導権を握り、終盤になって斬り合いになったときに相手に手番を渡すと有効になることが多いのです。」


?「私はいかに集中するかじゃなくて、いかにうまく休んでいくかということをかんがえていきます。長時間、たとえば一時間まるまる集中するというのは相当難しいことなんですね。だから、少し休みを取るという言い方って変ですけれど、思考の波をつける必要があると思っているんです。」