木村剛


キャピタル・フライト 円が日本を見棄てる

キャピタル・フライト 円が日本を見棄てる


木村剛さんは辛辣ですが、言っていることは分かりやすくて、納得できる。この本の前半は、概ね日本叩きで描かれてて、読んでいるとドルを持っていることの重要性を再認識します。もちろん、流されることはいけないんだけど、僕もどう考えたって赤字700兆円超のこの国がこの先、破綻を経験しないわけには行かないだろうと思っています。あくまでも個人的な意見として。


日本が積極的に国民に対して国債を販売していることに関して。辛辣(弱)抜粋。
「もしも機会があったら、女優の藤原紀香が出演している個人国債販促用のポスターを入手してみてください。藤原紀香の右横に魅力的なキャッチフレーズが書いてあります−「国債っていいかも」と。ひょっとすると、「国債っていいカモ(鴨)」という意味なのかもしれません。所詮、最後の最後、財政赤字がどうしようもなくなれば、他の国の歴史と経験が示すところによれば、国家は国民を必ず裏切ります」


最近は、個人投資家に対する本がたくさん出ていて、デイトレードを推進するような本まで結構売れているみたいです。でもこの人は多くの著作の中で、デイトレードの危険性を唱え(まあ当たり前といえば当たり前なんだけど)、基本的で地味なことを繰り返し訴えておられます。まあ、そういうところは信用できるなと思ってます。


節約こそが投資の基本だと言い、家計簿をつけることを推奨する。二年分の生活資金を持った上で、余剰資金を投資する。分散投資ポートフォリオを組んで、長期保有を基本とし、デイトレード等の機関投資家と戦うような戦略は採らない。円安に備えて、基軸通貨を多少保有しておく。というのが主な主張。


戦略経営の発想法 ビジネスモデルは信用するな

戦略経営の発想法 ビジネスモデルは信用するな


辛辣、木村剛さんのビジネスモデル批判。サブタイトルに「ビジネスモデルは信用するな」と書いてある。


最近は、起業をするに当たってビジネスのモデルを作ることに注力し、ビジネスモデルが美しければ起業も成功するように考えている人間が多い。確かに、ベンチャーキャピタル等もビジネスのモデルに説得力がなければ、起業のためのお金も貸してくれないだろう。しかし、起業が成功するかどうかは、困難を乗り越える腹の据わった、現場を重視する経営者が存在するかどうかにある。人の能力を引き出すことが出来る、引き出そうと努力する経営者が必要であると説く。そして、紙の上の計画を全てだと考える評論的な風潮をぶった切っている。


木村剛さんは、怖顔で理論的に論客をバッサバッサと切り捨てていく割りに、実は、かなり熱いところがある。理屈が通ってないものはまさに殺してしまいそうな勢いだけど、それとは違う部分もチャンと重視している。そういうところが素敵だと思う。


ただし、この本は結構分厚くて、経営者との対話や事例が多く盛り込まれている。何度も読み返すことは中々難しい。また、その内容もどっかの本で読んだような内容が多い。というわけで、読み返す必要なく、本文に記載されている「ドラッカーの10原則」を心に留めとけば、それでいいのではないかと思う。そうすると、結局はドラッカーが凄いという話になるのだが、まあそれはそれでいいのやないか。


例えば。ドラッカーの第10原則?
「確実なもの、リスクのないもの、失敗のしようのないものは必ず失敗する」


深い。


なお「10原則?」=「市場調査や顧客調査による予測が的中することはない」というのも、かなり熱い。