東京のどこに住むのが幸せか

東京のどこに住むのが幸せか (セオリーブックス)

東京のどこに住むのが幸せか (セオリーブックス)


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(以下引用)



短期間で大規模な都市が形成されたニュータウンほど、その後の町の衰退が激しい。急成長した街は急衰退する。「人口が増加する街の資産価値は上昇期待が大きい」という、ありがちな一般論は、もっとも間抜けで根も葉もないものである。一時取得層が大挙して押し寄せる街ほど危険なのである。そこで気になるのが、昨今注目を集めている臨海再開発ブームである。(中略)豊洲の土壌では、基準値をはるかに超える汚染物質が検出され、築地市場の移転問題にも影響が出ている。他の埋立地も大同小異であることは容易に想像がつく。それに地盤の強度も心配である。地震が起きたら液状化は起きないのだろうか。そもそも日常においてすら、地盤沈下は起きないのだろうか。



隅田川や荒川の流域周辺はマンション価格の減価率が高い。



新線効果などはお祭り騒ぎみたいなもので、所詮はいつか来た道である。たとえば、埼京線沿線は開業直後はバブル時代もあって、相当話題にもなった。しかし、いまは当時の半値でも売れない。こういったブームは一過性のものにすぎないので、インチキな情報に振り回されて、後の祭りにならないようにしたいものである。財産形成上の観点だけから考えれば、もしも足立区で新築マンションが買える予算があるならば、その予算で世田谷区で中古マンションを買うほうが賢明なのである。



不動産を買う前に、まず街を買え。



不動産の世界は世間の常識どおりに行動すると失敗する。



不動産の資産価値を左右する要素は単純である。換金性が高いこと。収益性が高いこと。そしてその2つの要素を満たすエリアは限られている。


1.かつて武家屋敷だった街
2.もともとは農村だったエリアで、戦前から開発されていた街
3.最低でも80年前後以上の歴史がある街
4.地域コミュニティが温存され、都市文明に多様性と歴史的厚みがある街
5.古代から自然災害の被害が起こりにくいエリアにある街
6.パワーエリートやアッパーミドルクラスにとって職住近接が成立している街
7.利便性だけでなく、教育環境、自然環境、医療環境など都市の基本インフラが総合的に整備されている街



ここ数年は都心の地価は下げ止まりから上昇に転じているものの、過去20年で見れば、明らかに右肩下がりのトレンドにある。



港区、渋谷区、千代田区など都心の各区のなかで、資産価値が高値安定している高級住宅エリアには、共通する法則がある。理由は徐々に説明していくつもりだが、実は都内で高値安定している町を順番にランキングしていくと、江戸時代の身分社会制度の順番と同じになる傾向がある。とくに千代田区や港区など、かつて武家屋敷が多く集まっていたエリアの多くは、現在でも高級住宅街として不動の地位を確立している。たとえば、港区の六本木、麻布など資産価値の二極化減少を加速している核心となるエリアはかつて武士たちが闊歩していた街なのである。



その一方で、職人や商人など町人が住んでいた下町エリアは残念ながら、人気が低迷しているのが現実だ。浅草・上野・日本橋を中心とする隅田川河口エリアは華の御江戸文化の中心地ではあったが、昔日の面影はもうない。とくに浅草などは観光資源としてしか存在意義が見出せない状況となっている。これらのエリアは、住宅地としての価値という視点だけで見れば、明らかに将来性への期待が薄いエリアとなっている。かろうじて、日本橋周辺の商業地の賃料は持ちこたえてはいるが、優良な住宅エリアとはいえない。



次に、農民が住んでいたエリアについてはどうなのか。たとえば、世田谷区、杉並区、大田区の住宅街などがそれに当たる。これらのエリアは関東大震災以降から戦前にかけて開発された住宅地である。昭和初期に期限を持つ郊外と呼ばれるエリアには、優良住宅街がいくつも形成されている。



つまり、江戸時代に武士が住んでいた街が最も資産価値が高いエリアに発展し、都心に近い西側の平野や丘陵地に広がる農業地帯にも、いくつもの高級住宅地が形成されていることが確認できるであろう。