高橋俊介


スローキャリア


「勝ち組」「負け組」などという人間はアホである。自分らしいキャリアを築くことこそが最も重要であり、そのためには土台である家族をしっかりと作らなければならない、という主張が光る。

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planned happenstance theoryによれば、人間のキャリアの80%以上は偶然の出来事によって左右される。つまり、キャリアは計画的に作れるものではなく、(結婚と)キャリアは選んだ後が重要だと言える。したがって、??である。


? 目標をキャリアに置くのではなく、仕事内容に置いて日常の仕事へのこだわりを重要視する。3年とか5年とかの計画は無意味であるから、3ヶ月、半年、1年という短期の計画を立て、目の前の仕事に課題を持って取り組む。


?偶然訪れるキャリアのチャンスを受け止めるために、損益分岐点の低い生活を設計する。生活固定費を低く抑えるようにする。そのためには家族設計が大切で、結婚すれば自動的に家族ができるという発想ではなく、結婚したら家族を作っていく努力をするという発想を持たなければならない。

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また経営についても高橋先生は述べている(高橋先生は、SFCの教授になる前にはワトソン・ワイアットという外資系人材コンサルティング会社の社長を努めていた)。


?上昇志向の強い人と表裏のある人は絶対に入社させない。なぜなら、必要以上に大きくしたくないというポリシーがある会社では上昇志向の強い人は必要ないし、コンサルタントとして人間力を重視していたので裏表のある人間は必要ないと考えていたからである。


?オファーがあっても依頼内容が納得できなければ、案件を断った。なぜなら、ただ売上を増やしたいために仕事を受注していたら社員は必ず疲弊していく。疲弊すれば優秀な人材が流出するからである。


?ローコスト・オペレーション体制の確立にこだわり、社内から序列を感じさせるものを一切排除した。コンサルティング・ファームにありがちな都心の一等地の高層ビルを避け、机の大きさを同じ大きさにして、パーティションを低くしてコミュニケーションを促進させた。また会議室以外の個室は全て排除し、チーフや主任という肩書きもなくした。なぜなら、序列を感じさせるものはすべてコストを増やし利益率を低下させる上に、上下関係や優越感というデメリットを生むものでしかないからである。


成果主義は怖くない―「仕事人生」を幸せにするキャリア創造

成果主義は怖くない―「仕事人生」を幸せにするキャリア創造


基本的には、上述した「スローキャリア」と同じ。


個人も企業も、固定費を低く抑える。
また、個人も企業も地位を重視するようになったら終わり。



高橋先生は、計画してキャリアを形成することは殆ど不可能であると主張する。キャリア形成には偶然の要素が大きく影響するからである。したがって、我々は目の前にある仕事をいかに有意義に取り組んでいくかが重要になってくる。


また、変動する時代の中では、自分のキャリアの陳腐化も早い。したがって、そのような「キャリア・ショック」に備えるためには、以下の心構えが必要となる。?まず、生活の固定費を低く抑える。?次に、自立的なキャリア形成を常に心がける。自立的なキャリア形成は、自分を知り→可能な限りで独自の未来観を持ち→継続的な学習を行うことによって可能となる。?そして、出来るならば海外での経験を積んでおく。


そして、私の場合に特に必要となってくる指摘が「バーンアウトしないキャリア設計」だ。確かに、(P73〜)「年功序列の時代には、年とともに上に行くほどプレシャーが減り、何とか定年までまっとうできた。しかし、時代が変わり、いまや上級管理職になればなるほど、成果主義によるプレッシャーがのしかかるようになってきた。まじめに努力しようとする人ほど、動機とのアンマッチングが増幅し、あるとき、臨界点に達してしまう。実際、ここ数年、中高年自殺者の増大が社会問題になっているのは、その表れと見ることも出来る。」それを防ぐためには、いきなりは誰しも不可能であるが、ちょっとずつ自分のスキルが活かせる仕事に近づいていくことが必要となる。


あと、P61には「上司と部下の組み合わせで、最悪のパターンは、外的管理の強い上司の下に自己管理の強い部下が配置されているケースだ。」とある。僕は、外的管理の強い上司に当たったときには、最大限の注意を払って、とことん我慢する覚悟を持つ心の準備をしないといけない。